
写真を拡大する | 甲板の上に出ると、昨夜まで忙しく上下していた水平線は、穏やかに身じろぎもせず朝日を浮かべていた。
雨など一度も遭わなかったはずなのに、甲板のあちこちに出来た水たまりだけが、昨夜までの闘いを物語っている。
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写真を拡大する | とうとう南極圏に入ったらしい。
空気は確かに冷たいが、凍てつく程ではなかった。
静かだ。
「音の無い世界」と聞いた事はあったけど、これほどの静けさは寂しさを連れて来る。
・・・これが「静寂」の語源?
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写真を拡大する | 陸地らしき物が見えてきた。
南極大陸なのか?
ん?でも、スケジュールで見る限り、南極大陸に到着するのは明日になっているけど・・・
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写真を拡大する | では、この見上げる程の雪を載せた陸地は、・・・
BRABANT ISLAND?
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写真を拡大する | 船の両脇に島影が増えてきた。
水路が少しずつ狭くなってきたような・・・
と、行く手に、もはや島としか見えないぐらいの巨大な氷山があちこちに出現!
船が船速を落とす!
と、同時に船底から低い回転音と振動が!
船首の側面に設置されたハイテク方向転換スクリューが始動したらしい。
近づいて来る氷山を前に、バビロフ号が船体をきしませながら、強引に首を振り出した。
まるで映画みたいな迫力だ。
ゾンビのおばちゃんが、「Oh!」と口をおさえて立ちすくむ。
このタイミングで、BGMはまた、ロシア船員お気に入りの・・・
『タイタニック』!
(ある意味ベストな選曲だが、一番聞きたくない選曲でもある)
野球場が4つ以上は作れそうな巨大な氷の塊が、ゆっくりと船の正面から側面へと流れていく。
誰も声を出そうとしない。
いや、声が出ない。
この音の無い世界の中、バビロフ号だけが次の障害物を発見して、またスクリューを回し出した。
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写真を拡大する | 双眼鏡をのぞいていたゾンビおばあちゃんは、再び低く「My God!」とつぶやき、水平線を指差した!
その指先を真似ると、・・・
あれは、・・・?
あの微かな水しぶきは・・・?
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写真を拡大する | 不意にアナウンスがくすんだ青と白だけの世界に割り込む!
「10時方向、ザトウクジラ!」
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写真を拡大する | 午前中のほとんどの時間をこの甲板で過ごし、
ランチのアナウンスとともに、いそいそと豪華レストランで食い散らかし、
再びこの定位置へと腰を落ち着けた。
南極では、ただ体温を保持するだけでかなりのカロリーを消費するらしく、ツアーの豪華山盛りフルコースで摂取する横綱顔負けの高カロリーにはそれなりの理由があるらしかった。
つまり、ドレーク海峡で強制的に逆噴射ダイエットを強いられた挙げ句、点滴以外の栄養を摂取していなかったゾンビの方々は、一人、また一人と寒気にやられ、顔色を青白から土気色に変えてベッドに戻って行く結果となり・・・
現在、鋼鉄の三半規管を持ち、閑散としたレストランで食欲を解放していたチーム 「飽食」のメンバーだけが、この夢の様な時間を楽しんでいる。
南極観光に一番必要な物は、資産力や権力ではなく、体力=食欲を維持できる丈夫な三半規管かもしれない。
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写真を拡大する | アナウンスが静寂の海に響き渡る。
「Antarctic Continent(南極大陸)!」
・・・つまり、あの白い大地が、 『南極大陸』?
おおおっ!
あれが、南極大陸!
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